JR大正駅を降りてすぐの周辺はたいした飲み屋街になっている。
環状線の駅では天満や新今宮(新世界・萩之茶屋)や京橋ときたら次はここ大正駅ではないだろうか。
そんな飲み屋エリアの路地の中程に畑八酒店はある。
いわゆる酒屋の店先で飲ませてくれるタイプの店。
愛想も素っ気もない立ち飲み。北九州では角打ちと呼ばれる形態で、今では全国的に角打ちという呼び方が広まっているが、やはり関西では立ち飲みと呼ぶ方が馴染みがある。「酒屋の立ち飲み」という実にまどろっこしい呼び方で、酒屋の店先形体ではない立ち飲み屋(和風スタンディングバー)とは区別をつけている。一般人にとっては藤子不二雄Aと藤子F不二雄の区別くらい関心のないことかもしれないけど酔っぱらいにしたら大切な事だ。
地域密着の酒屋という佇まいが僕らのような人間を惹きつけてしまう。部外者が立ち寄りたくなる要素がゼロ。完全に時代に取り残されてしまっている。そこがかえって希少になってくる。近いうちに絶滅してしまうだろう。
営業時間は17時すぎからだったと記憶している。酒屋だからといって早い時間に飲めるというわけでもない。大正エリアは店は多いものの昼間から飲める店は意外に少ない。朝から平気で飲める天満や京橋や大阪駅や新世界周辺とはそこら辺が全く違う。生活パターンに即してのことと思われるがどこがどう違うのか明確なところは判らない。
夕暮れ時になって看板がつく頃をねらって入ってみた。中は変形のコの字カウンターになっていてなかなか広い。おばちゃんが二人とおっちゃんがいて家族経営の雰囲気だ。店内には既に飲んでいる客が何人かいるが全員が近所の顔見知りだろう。とりあえず大瓶ビールを注文してから何があるかゆっくりと観察してみる。酒屋の立ち飲みにしては料理のメニューが多いようだ。とりたててお腹が空いているわけでもないのでこういう時はポテトサラダでも注文しておくと楽だ。酒屋らしくお菓子や豆類も壁に吊るしてある。
ダイビンをやりながらしばらく雰囲気を楽しんでから会計をして店を出た。詳しい料金は判らないがダイビンが400円程度だ。料理もそんなに安くはない。僕のようにあちこちの地元の酒屋に入って飲むという趣味でもない限り、わざわざ足を運ぶ意義のあるような店でもないようにも思う。ただしメニューは豊富なので思わぬ看板料理が無いとも限らない。その辺は常連さんだけが知っているのだろう。
この手の酒屋に入ると、酒を並べている棚に、ホコリをかぶった酒瓶をたくさん見ることが出来る。コンビニやスーパーなんかじゃ見かけることが出来ない古い銘柄だったりするのが楽しい。まだ売っていたのかという気持ちになれる。もしかしたらデッドストックの可能性もある。この時は珍しい色のラベルの宝焼酎の一升瓶があった。あまりにも気になったのでカウンターを回り込んで見に行ってしまった。よく見ると宝本みりんの一升瓶バージョンだった。それにしたってこうした酒屋くらいでしか見かけることは無いけど。
畑八酒店 (立ち飲み居酒屋・バー / 大正駅、ドーム前千代崎駅、ドーム前駅)
夜総合点★★★☆☆ 3.0