九州に上陸したおりに、わりに寄りたいのがJR小倉駅だ。小倉駅というと九州の最初の駅である門司駅の次の駅だ。北九州の最大の街でもある。九州の玄関口のような都市だ。福岡県では博多に隠れてあまり目立たないけれど、これでなかなか味わい深いところである。
小倉駅の改札をくぐって驚くのは、駅の構内にモノレールが突っ込んでくるところ。北九州モノレールとJRが合体しているせいでこうなっているのだけど、この未来的な構造のインパクトはなかなかのものだ。
モノレール小倉駅の次の駅にあたる平和通駅が小倉駅の目と鼻の先にあるのもすごい。駅前にある駅というおかしな表現が成り立ってしまうくらい近い。調べてみるとやはり本来はこちらから乗り換えていたようだ。その後にどうしても小倉駅に突っ込みたくて今のような形になったのだ。執念を感じる。あまりに近すぎるせいだろうけど、100円の切符を買えば、次の次の駅である旦過駅まで連れて行ってくれる。旦過駅は旦過市場というのがあって、これもなかなか楽しいのだけど、それについてはまた後に語ることにする。あと、北九州モノレールは小倉競馬場までの重要な交通機関だったりする。これは行ったことが無いので、いつか行ってから語ってみたい。
小倉駅には構内にうどん屋があって、ホームにもうどん屋がある。これだけでもうれしいのだけど、さらにホームに立ち食いラーメンまである。さすがとんこつラーメンの国である。ホームでの立ち食いとんこつラーメンは、福岡県内では一応JR博多駅にもあるけど、JR小倉駅ホームの店のほうがよりストリクトなとんこつラーメンを食わせてくれる。
まず何が重要かというと値段の安さ。九州のとんこつラーメンというのは安さと手軽さが重要だ。420円というのは格別に安いというわけでもないけど、駅ホームで出すとんこつラーメンとしては頑張っている方ではないだろうか。替え玉が120円というのも、少々高いけれど、まずまずであろう。急いでいる事が多い駅ホームでは、悠長に替え玉することもあまり無さそうだ。
店内で立ち食いすることもできるけど、ホーム吹きさらしのカウンターもあってこれも嬉しい。ただでさえ吹きさらしの立ち食いそばは減る傾向にある。こんなシチュエーションで本格的なとんこつラーメンを立ち食い出来るなんて、日本ひろしといえども小倉駅だけじゃないだろうか。(他にもあったら教えて欲しい)
高菜や紅しょうがなどを自分で入れる事が出来るのも重要で、駅ホームの店なんかだと、そういう要素は端折られがちに思うのだけど、小倉駅のとんこつラーメンはその辺りにも妥協がない。ごはんセットで530円というのも泣かせる。
これが問題の420円のとんこつラーメン。ネギ、きくらげ、メンマ、チャーシューがしっかりとのっている。サイズも普通に店で出てくるのと変わらない。どこからどうみても基本的なとんこつラーメンだ。奇をてらったところは無いが、手を抜いたところも見当たらない。無個性なとんこつラーメン。しかしとんこつラーメンというのは、無個性であればあるほど本来のとんこつラーメンの味わいに近付いていく気がする。チャーシューは薄いハムみたいなのが良い。飾らないし語らないのが博多のとんこつラーメンというものだ。ただし、ここは小倉だけど。
食べ終わった後、電車まで少し時間があった。一瞬替え玉のチャンスかと迷ったが、止めておいて残ったスープを飲み干した。替え玉は120円で、大盛りだと100円増しというシステムはちょっと珍しい。替え玉をするちょっとした時間を節約する意味もあるのかもしれない。駅前やホームのそば屋というのはスピードもサービスなのだ。